2014年9月25日木曜日

美しき染色家たち―アトリエ訪問記Ⅱ





先日、仔羊のぬいぐるみを作っているアトリエを訪問しましたが、今日はそこで新作スカーフの染色が行われているということで、再びお邪魔してみることにしました。



三人の染色専門スタッフがいました。なにやら不思議な感じです。染物をする人たちなのに、職人というより、「染色家」と呼びたいような「いでたち」をしています。長靴じゃなくって、パンプスを履いている! きれいにお化粧しているし・・・飛び入り取材なのに。




この三人の美しき染色家――八川多賀子さん、熊崎雅代さん、新井由美子さん――がアトリエをなんとも優雅な空間にしているのです。やっぱり美しいものは美意識の高い人たちの中から生まれてくるのよね、と妙に納得です。




その美的な空間に、なぜかロケットのような物体がありました。これはスカーフを蒸す機械だそうです。




どう見てもロケットだ!




「スカーフを蒸す??」 その謎はあとで説明します。



実は、熊崎さんは今日が最後のご出勤だそうです。なんと青森県にお引越しなさるとか。それで今回の取材は熊崎さんを中心にお話を聞くことにしました。今日の作業は、きょうけつ染めの最終仕上げ。


ちなみに、きょうけつ染めは、漢字で書くと夾纈染め、天平時代から伝わる板締めによる染色方法で、正倉院の宝物にも残されている伝統の染物ですが、実は一度廃れたものを、当研究所で復活させたのだそうです。すごいですね~。


ゴースと呼ばれる絹地に染めていきます


色は見本帳から選ぶ


お話をしながら、熊崎さんは作業台の上にきれいな色の絹を取り出しました。「これから何をするのですか」と聞くと・・・


「乗馬です。」


「え、乗馬?? この作業台で・・・」


「あ、青森に行ってからのことを聞かれたのかと思った(笑)」なかなかおちゃめな熊崎さん。


台の上では、スカーフを折りたたみ、板に挟んでいきます。染めたい部分のみ外に出して、キリキリと締め上げます。なかなか力が要る作業。優雅で和やかな空気のなかに緊張感がみなぎってきました。


畳んでいます


板に挟んでいます



このきょうけつ染めはかなり手間のかかる染色手法で、板に挟んだ布を一色ずつ段々に染め上げていくので、一枚のスカーフを作るのに何日もかかるのだそうです。今製作中のスカーフは、ゴースと呼ばれるやや目の粗い張りのある絹地に、四色のグラデーションがかかっています。今日はその四色目、最終仕上げの日です。

ステンレスのボールに染色液が用意されました。板締めされた絹地に少しずつ色が入っていきます。最初は薄い色から、根気よく色を濃くしていって、同時に水温も少しずつ上げていきます。ムラにならないように染めるのは至難の業。とにかく必要なのは「根気」、これに尽きるそうです。



染色風景


ムラにならないように何時間もかけて色を濃くしていく


彼女たちが根気でかんばっている間、私は出来上がり作品を試着してみました。新作は二色展開。エメラルドとパッションです。120センチ×100センチの大判で、適度な光沢があります。巻いてみると、思っていたよりずっとエレガントな印象。派手かなと思いましたが、シックで上品です。ちょっとお洒落をしたいときに、さっと巻くだけで、装いが一ランクアップします。プリントや織物と違って、この染め方はグラデーションが自然なかんじなので、裏表を気にせず使えるのもうれしい。何色か入っているので、どんな服にも合いそうです。今日は花柄のチュニックを着ていた私ですが、どちらでもいけそうです。無地のセーターやコートに巻いてもすてきですね!



エメラルドカラー

パッションカラー


さて、染め上がったスカーフは水洗いされます。そしてアイロンかけ。それから、最初にお見せしたロケットの出番です。これは、スカーフの色移りを避けるために使われます。染め上がったスカーフを不織布と呼ばれる布に巻いて、この機械に入れて一時間ほど蒸すのだそうです。な~るほど。



板から外します



不織布に巻きます


ロケット型蒸し器に入れて、待つこと一時間




こうして今年の秋冬物スカーフが出来上がりました。きれいな箱に納めて販売されます。



特注の箱です



さて、ここでうれしいニュースです。1028日から119日までの2週間、スカーフの特別イベントが開催されます。その名も「スカーフフェア&夾纈染めフカーフオーダー会」。一点一点丁寧に染められたスカーフの新作が販売されます。またお好みの色を選んで染てもらうというオーダーメイドも可能だそうです。すごいですね~。詳しくはHPをご覧ください。↓
http://www.jiyu.jp/kougei/201410_scarf.html


「染色という作業は根気と神経を使う。だからピリピリした空気にならないように、気をつけています」とリーダーの八川さん。そうか、だから和やかさとエレガンスを保って作業することが大切だったのですね。美しい作品は、やっぱり美しい環境で、やさしい気持ちを持った人たちによって生まれて来るものなんですね!今回のアトリエ訪問で大切なことに気が付きました。


最後に、三人での作業は今日でおしまいということで、記念のショットを一枚。熊崎さん、青森でもがんばってくださいね!


左から新井さん、熊崎さん、リーダーの八川さん



0 件のコメント:

コメントを投稿