2014年10月28日火曜日

ぬいぐるみのホームドクター



  

代表の永井明子さんのデスクに、こんな仔羊ちゃんがいました。

 






老いている・・・おじいさんみたい。キュプラ製の顔が限りなく薄くなって、ガーゼのようになっています。鼻も凹んでペタンコです。「顔の部分を直したいのですが可能でしょうか」というメモ書きがついていました。

 
体の部分は前に一度直してあげたのだそうです。でも、なんとなくしぼんでいます。

 
この老いた顔とやせた体を見たとき、持ち主さんがどれだけこの仔羊ちゃんを愛してきたのだろうと思うと、胸がいっぱいになってしまいました。

 
ちょっと前のブログに書きましたが、私には親友以上のぬいぐるみがいました(いまもいます)。とにかく四六時中持っていたので、片目を失い、首もひょろひょろ。でもどこにも治してくれるところはなかったのです。自分で不器用に治していました。(ブログ「ぬいぐるみの大切さ」見てください、よかったら)↓


仔羊ちゃんの販売が始まったのは1965年。来年で発売50周年を迎えます。たくさんの子どもたちがこの仔羊をお友だちにしてきたのです。そして生活工芸研究所ではその間、ずっと仔羊のホームドクターでした。

 
老いた仔羊ちゃんは、今アトリエに入院中です。持ち主さんは海外にいらっしゃる予定なので、緊急手術を受けていることでしょう。名医の秋元三喜子さんがきっと元のかわいい仔羊ちゃんに戻してくれることと思います。(ブログ「アトリエ訪問記I」見てね!)↓


さて、さっきも書きましたように、来年は発売50周年の仔羊のぬいぐるみ。しかも来年は羊年!羊年の私も絡んで、ヒツジプロジェクトが進行中です。とってもかわいいニューバージョンが登場する予定・・・楽しみにお待ちください!!!

2014年10月16日木曜日

コルクの積木イベントレポート その1~クレマチスの丘






ここはどこでしょう?



こんな風に富士山が見える駅は?



答えは三島駅。三連休の二日間、クレマチスの丘、というところで開催される「COMMUNITY MARKET 2104~月とうさぎの収穫祭」で、おなじみの「コルクの積み木であそぼう」ワークショップを開催しました。






研究所のスタッフは私を入れて5名。(代表の永井明子さん、ミッキーマウスのキャラクターいっぱいのスエットを着て、気合いが入っています。)







三島駅からタクシーで30分弱の会場に着くとすでに参加者が準備を始めていました。地元三島で無農薬有機栽培茶を生産販売されている勝又苑の勝又嵯枝子さん(右)。なんとわれらが生活工芸研究所のエプロンを着ている!(ちなみに彼女は自由学園の卒業生でした)







会場は「ベルナール・ビュフェ美術館」の真ん前。ビュフェの蝶の彫刻が秋空に羽を広げていました。それにしてもよい天気!






テントには商品を並べました。イベントのタイトル「月とうさぎの収穫祭」にちなんで、うさぎのぬいぐるみをたくさん持ってきました。





紅白うさぎのケータイスタンドもスタンバイ






アンティークショップ、コーヒー店、アクセサリーとワンピースの店、かごの店などが並びます。






あ、ここにも研究所のエプロンを着た人を発見。小さな男の子でした。実はいちばん最初に出てきた勝又さんの子ども。かわいい!





さて、いよいよお客さんをお迎えする準備が整いました。コルクのマットを敷いて240個の積み木を用意。いったいここへ来る子どもたちは、これらの積み木でどんな遊び方をするのでしょうか。



イベントレポートその2へ続く・・・



その前にちょっと「クレマチスの丘」について紹介します。というか、紹介するまでもなく、かなり有名な文化複合施設らしいです。私は初めて来たのですが、その広大な敷地とそこに点在する建物の美しさや、美術館や写真館などの充実した内容にびっくりしてしまいました。数あるショップも庭園もカフェもレストラン(レストランのお味も)なにもかもに美意識が行き届いていて、ここにやってくる人たちも、とびきりオシャレな人ばかりでした。



もともとはスルガ銀行の創立者である岡野喜一郎氏が蒐集していたレオナード・ビュフェの作品を展示する美術館からスタートしたということですが、そのお孫さんである岡野晃子さんの代に、三島随一の複合文化施設になりました。晃子さんはおしとやかそうな女性でしたが、いやいや相当やり手の総合プロデューサーですね~。おどろきました。



豊かな自然の中で、ゆったりと美術や野外音楽やお食事を楽しむことのできる、じつに素敵な空間です。イベントも充実しています。
クレマチスの丘HP↓




後半レポート(コルクの積木イベント その2~子どもってやっぱりスゴイ!!!)に続く↓












コルクの積木イベント その2~子どもってやっぱりスゴイ!!!



さて、前回に続き、クレマチスの丘でのワークショップレポートです。(前回のブログ先に読んでください、よかったら→http://seikatsukogei.blogspot.jp/2014/10/blog-post_16.html


たくさんの子どもたちとお父さん、お母さんが来てくれました。一日目はおよそ150人、二日目に250人、合わせて400人もの子どもたちがコルクの積木と遊んでくれたことになります。
 
 
 
最初のうちは私たちスタッフが張り付いて、子どもの相手をしていたのですが、子どもたちは自分で勝手に遊べるようです。しかもすごい集中力があっていつまでもやめたがらないので、「ね~、そろそろ他のものを見に行こうよ~」「ご飯食べる時間だよ~」とお母さん方もすっかり困ってしまっているようで、ちょっとお気の毒でした。


 
ここからは、コルクの積み木を使って子どもたちがどんなふうに遊ぶかを見てみることにしましょう。自分がどんなに頭が固かったか、子どもの遊び方を見てあらためて思わされます。彼らの発想は実に自由でおどろくほど個性的です。(写真は保護者の許可を得て掲載しています。載せられなかった子はごめんなさい<(_ _)>




開始十分もしないうちにあっという間に子どもが集まって、遊びだしました。




まず先に目に留まったのは、こんな風に「何かを作ろう」という意志のない並べ方。これで十分楽しいみたい。






子どもがいっぱいになりすぎて、イベント主催者から「もっとスペースを広くしてもいいですよ」といわれ、コルクのシートカーペットを足しています。子どもが手伝ってくれている。






こういう無理な積み方にトライするのも大人にはできない。





さいきん電車にハマっている子。線路を作っている。





この子はどうしても三角の上に三角を積みたかったので、何十分もトライして、ついにこんな形に積むことが出来ました。大人ならすぐあきらめます。コルクなら滑らないのね。





この子が作ったのは・・・




パンケーキ! バターがのっている。積木でパンケーキ・・・




今日作ったなかで、最高の高さを記録!この後作った本人が一気に破壊しました。周りに飛び散っても安心なのがコルクのいいところ。音はしないし、ぶつかっても痛くないから。





こちらは写真を撮ってあげようとしたら壊れちゃったので、再度挑戦してくれました。クールな塔だね!





女の子と怪獣?かわいすぎ。




なかなかセンスある積み方です。






ご両親によると箱と音にハマっているらしく、ていねいに箱に詰めては揺さぶって音を楽しんでいました。





いちばん長く遊んでくれた子です。なにかを作るより、ひたすら右手にひとつのコルクを握って飛んだり跳ねたりしてご満悦でした。





平積みという遊び方も。高く積むだけが積木じゃない。





この子はきっと高名な建築家になる!?構造理論が分かっているようだ。




この子は左から女、男、子どもを作ってみたとか。アーチストになるに違いない。




こんな積み方もまた新鮮ですね。




椅子か~、なるほど。



お姉ちゃんと弟も仲よく遊べる積木でした!!




≪まとめ≫



今回のイベントも積木遊びの奥深さを実感しました。むずかしい形を完成させようと粘りに粘ったり、失敗したら次は「基礎」を固めてやり直したりと、子どもたちは投げ出さず、あきらめず、ひたすら創意工夫を重ねていました。大人に何も言われなくても、自分たちで考えて、感性のおもむくままひたすら積んでは壊し、積んでは壊しをくり返します。


 
できあがった「作品」はどれもみんな違って個性的。齧って遊ぶような幼児から小学生高学年まで、みなそれぞれの段階で積木と向き合っていました。そして何十分も(子どもによっては何時間も)、あの単純な積木で遊び続ける集中力にも驚きました。単純だからいいのでしょう。
 


また良質の樹皮でできているコルクは、自然素材100%。冷たくないし、固すぎもせず、触れているだけで安心感があります。滑らないのでさまざまな形や高さに積めて、崩れても音もしないし痛くないので、子どもにとってなじみやすいのだと思います。


 
積木の購入をご検討の方は、ぜひJM(ジェー・エム=自由学園明日館)ショップやイベントにいらして、実物を触ってみてくださいね。




コルクの積木の詳細はこちら↓
http://store.shopping.yahoo.co.jp/jiyu/c0d1ccda.html

2014年10月3日金曜日

研究所の織姫さま



自由学園生活工芸研究所の制作には二つの部門があります。これまで紹介してきたコルクの積み木やぬいぐるみを作っている「玩具部」、それから染めのスカーフなどを作っている「織物部」です。今日はその織物部のリーダーである本橋安希子さんを紹介します。


本橋さんは織物を専門としています。言ってみればここの織姫さま。織姫さまっぽいきれいなロングヘアーの持ち主です。でもあんまりあんまり化粧っ気がなくてボーイッシュな感じがするところも魅力です。そして年齢も不詳です。


さて、織姫さまも自由学園の卒業生。自由学園というのは土曜日の全授業が美術、というすごい学校なのです。なので美術系に進む人も少なくなく、彼女もまた、学生時代から美術が得意だったらしいです。


といっても彼女の場合、お父さんもデザイナー、主に看板を作っていたとか。それで子どものころから家には色鉛筆その他、さまざまな美術道具がそろっていたというわけです。箸より先に色鉛筆を握っていた子供だったのです。


自由学園には、幼稚園(「幼児生活団」と呼ばれている)から入って、最高学部(大学に相当する)では、日本画を専攻しました。そこで「余白の美」に目覚めたとか、渋い!


卒業後はスタジオジブリに入って、『もののけ姫』のような背景画を描きたかったそうですが、惜しくも入社はかなわず、学生時代にアルバイトをしたことのあった生活工芸研究所からお誘いを受けたとのこと。


入社後の2年間は研修期間として、おもにヨハネス・イッテンの色彩論を学んだそうです。ヨハネス・イッテンとは、戦前ドイツにあった建築・美術学校バウハウスでデザインを教えていた、たいへん著名な先生です。


今から73年も前の1931年、自由学園の二人の卒業生(山室光子さんと笹川和子さん)がデザインを学ぶために、バウハウスに留学しています。ヨハネス・イッテンに師事し、その後、独立したイッテンのデザイン学校にも行きました。彼女たちが帰国後に創めたのが、生活工芸研究所の前身なのです。とても古い歴史があるのですね!
http://www.jiyu.jp/kougei/profile/history.html (生活工芸研究所の歴史)


そして研究所の織物部では、いまでもイッテンの色彩哲学を大切にしています。本橋さんによると、イッテンは竹久夢二が好きで、日本のワビサビの分かる人物だったのだそうです。彼の三原色は、通常のマジェンダ、シアン、イエローとはちがうもので、独特の美しさがあるらしい。


たしかに、研究所の代表的な縞模様のテキスタイル「プラネテ」の色調は、西洋のストライプとはちょっとちがいます。縞ほど「和」ではなく、そうかといって、ストライプほど「洋」でもない。微妙な色加減でできています。





本橋さんを中心とした織物部では、毎年この「和ストライプ」の新色を発表し、バックやエプロン、スリッパなどを作っています。糸から染めて国内の織職人に作ってもらっているので、高品質、丈夫で美しい色が長持ちするのが特徴です。詳しくはこちらをご覧ください↓
http://www.jiyu.jp/kougei/item/cloth.html



和ストライプの「プラネテ」だけでなく、「織」と呼ばれるシリーズと「トゥイル」シリーズも人気です。それらについてはまたご紹介しましょう。


最後に、織姫さまの一押し商品の「スクエアサック」です。



スクエアーサック
ちょこっと「プラネテ」が使われている


これはお客様のリクエストにこたえて商品化された「大人のリュック」。背負ったら閉まる口、A4・B4サイズも入るのにスマートなフォルム、さらに400gという軽さが特徴です。
商品の詳細↓
http://store.shopping.yahoo.co.jp/jiyu/b052-233.html


織姫さまが機を織る姿を見ることもできます。ご希望なら、直々に機織りを教えてもらうこともできます。機織り体験してみたい方はぜひJMショップにいらしてくださいね!


織姫さまに機織りを習う男子の図



先日、新聞に載った織姫さま(左)