生活工芸研究所のアトリエはショップの裏にあります。今日は、そこに仔羊のぬいぐるみの担当者がいらっしゃるということで、取材に行ってみました。
アトリエのなか |
研究所の看板商品である仔羊のぬいぐるみですが、実は作製している人は、現在2人しかいません。前回のブログでお話したように、一時、皇室御用達が話題になって生産が追いつかず、仔羊作製専任スタッフを養成したのだそうですが、そのうちのひとり、秋元三喜子さんにお話を伺いました。
「仔羊を作り続けて12~13年になるかしら。2500体は作ってます。ここではいろんななおもちゃがあってどれも手縫いだけれど、ぬいぐるみのような『顔』があるのが得意な人と、ないのが得意な人とだんだんに自分の専門ができるのよ。」
そうです、ここで販売されているおもちゃはどれもひとつひとつ秋元さんのような熟練者が手作りしているのです。スタッフは約10名。このアトリエで作ることもあれば、それぞれが在宅で作ることもあるそうです。
さっそく仔羊の製作過程を見せていただきました。
まずは作業台の上におかれたのは大量の綿。こんなにたくさんの綿でたった3体のぬいぐるみしか出来ません。ふわふわで気持ちのよい綿、この上で寝てしまいたくなります。
ふわふわなのに弾力性のある良質の綿 |
オーガニック綿で出来たぬいぐるみの袋に綿を詰めてゆきます。この作業に熟練の技がいるのです。一度詰めた綿はもう動かすことは出来ません。慎重に全体のバランスを見ながら、まずは羊の顔の部分から詰めます。
顔の部分だけでもこんなにたくさんの量を入れる |
ちなみに綿を詰める顔や胴体の部分の生地を裁断する人と縫う人はまた別の人で、それぞれひとりずつしかいないそうです。すごいですね。
頭と胴体 |
耳と尻尾の生地を裁断します。ピンセットを使って小さな耳と尻尾をあっという間に作ってしまいます。
耳としっぽを作っています |
それから胴体に綿を詰めます。あんな小さな体にこんなに大量の綿が詰まっているから、弾力性があって抱き心地がいいのでしょう。綿が硬くならないように、おなかやお尻の部分は手だけを使ってふっくら仕上げます。
鼻の部分を縫い合わせ、また綿を入れて調整し、目の凹みを作り、口を刺繍糸でつけます。あまりの手際のよさに見ているだけで惚れぼれしてしまう私。まるで伝統工芸士のようです。思わずカメラから映像に切り替え、ずっとそのままビデオをまわし続けてしまいました。
まったく無駄のない手仕事ぶり! |
目と口をつけています |
「老眼とか大丈夫なんですか」とぶしつけな質問をする私に、「もともと目が悪かったので老眼が入ったらかえってピントが合うようになったのよ」と答える秋元さん。
目を縫い付けます。少したれ目気味がかわいいですね。
「あんまりキュートでニヤニヤしている顔より、ちょっととぼけた顔のほうがいいとおもうのよね~。それに作る人によってぬいぐるみの顔って微妙に変わるのよ。」
「自分の顔に似るそうじゃないですか。」
「そうそう(笑)。」
耳を縫いつけ、頭を胴体につなぎ、尻尾をつけるとできあがり。この間(約一時間)、彼女の作業に全く無駄な動きはありませんでした。さすがにこれまで2500体の仔羊を作ってきただけのことはあります。
片耳付きました |
胴体としっかりつなぎ合わせます |
出来ましたた!!!(隣はサンプル品) |
「あなたも作ってみる?」
「え~いいんですか。やってみます。」
むかしフエルト手芸にハマっていた私、何とかできる気がする・・・
しかし・・・
実際にやってみると、まず顔に綿を詰めるところで難航しました。頭がいびつになってしまうのです。鼻の部分は何とか縫えましたが、口が難しい。ぜんぜんかわいくならない! 何度もやり直させてもらいました。そうこうしているうちに目の凹のところが、だんだん膨らんできてしまいます。
目を縫い付けて、なんとか顔らしくなりました。それから左右に少し跳ねるように耳をつけます。これもまたけっこう大変。跳ね具合が微妙です。
試行錯誤の末、なんとか顔の部分は出来ました。私に似ているかしら?
自分で作ったものはそれなりにかわいく思えるけど |
胴体はあまりに時間がかかるので作ってもらうことに。出来上がったら、割引価格で譲ってもらおうとおもいます。とても売り物にはならないし。秋元さんのご親切な指導の下で、とっても楽しい体験ができました。
こんなふうに熟練の手で一つ一つ作られている自由学園生活工芸研究所のぬいぐるみたち。手作りならではの風合いと温かさがあります。ぜひショップに見に来てくださいね!