2014年8月22日金曜日

生活工芸研究所の「全体会議」



「全体会議」と呼ばれる、月に一度の会議に出てみました。研究所各部の売上や活動の報告をする内輪の会議です。重要文化財自由学園明日館の有賀寛館長も社長として出席しています。


毎朝仕事を始める前にラジオ体操をしている会社なのですが、全体会議の前には賛美歌を歌います。母体である自由学園がキリスト教系の学校で、ここの職員はほぼ学園の卒業生なのです。


「その頭にはかむりもなく、その衣にはかざりもなく、まずしく低き木工として、主は若き日を過ぎえたり~♪」 


なんだかシュンとしてきちゃうような歌詞です。まったくこの会社には、商品を売るぞ、というギラギラしたものが感じられず、「いいものを丁寧に作っています」的な人ばかりです(なので私がこうほう支援しているのですが)。

全体会議の様子。手前に機織り機


賛美歌の後は聖書も読んだりするそうですが、今日の担当スタッフさんは8月17日の日経新聞の記事を紹介していました。


「個人消費が持ち直してきた。原因の一つに生活の『質』の向上を求める消費者をうまくつかんだ企業の努力がある。」

 「『上質、ゆっくり、文化』そんなキーワードが成熟社会の消費を掘り起こす。」


たしかに、過去において価格破壊などと呼ばれたダンピングと廉価な商品を求める消費動向によって、良質のものをギリギリの価格で提供していた多くの企業がやってゆけなくなりました。日本の産業を支えてきた会社や商店が倒産してしまったことが、巡りめぐって不況につながった面もあると思います。国際競争力も低下してしまいました。


この会社は地道にやって来たのでなんとか生き残ってはいますが、バラエティに富んだ安い商品が手に入る現在、たとえば質の良さを追求してきた研究所オリジナルのおもちゃなどは、消費者にとって割高に見えるかもしれません。


でもおもちゃって実は値段ではないんですよね。子どもの成長のいちばん大切な時にそばにあるもの、成長を助けるものなのです。ぬいぐるみ一つにしても、どこの国の誰が作ったのかも分からない、素材の安全性も分からないものを与えるより、玩具の子供に与える影響を考えたデザインや色のもの、しかもしっかりした生地で日本の職人さんが日本の子どものために一つ一つ手作りしたぬいぐるみを与える方がきっといいと思うのです。


先日のコルクの積木で遊ぶイベントで、子どもたちは積木だけで90分間集中して遊んでいました。単純なおもちゃの方が子どもの創造性は発揮されるようです。たくさんのおもちゃがあるとかえって気が散るのかもしれません。


良質なおもちゃを選んで子どもに与える――それは子どもの創造性や情緒の安定など様々に影響してくると思います。研究所には自由学園の幼児研究のなかから生まれたたくさんのロングセラー玩具があります。


「長い不況時代を経て費用対効果を見極める意識は鋭くなったが、所得増の期待が膨らみ、消費者は安さ以外の価値、『質』に目を向け始めた。」

消費者の賢い選択が日本の産業を支える時代が来たといえるかもしれません。このような機会に、研究所が作っている日本製のよい商品をもっと多くの方に知っていただきたいな、と思った全体会議でした。




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