2015年3月31日火曜日

さようなら~!ありがとうございました!



3月31日年度末。私の生活工芸研究所における活動も今日で最後です。

桜があっという間に満開になって、今日はもう散り始めています。私も、かのように退散の時期が来ました。

明日館は花見スポットとしても有名です


勝手気ままに、好奇心の赴くままに、会社側の視点ではなくて、一ファンのユーザーとしての視点から、知りたいこと、書きたいこと、伝えたいことをブログにしてきました。

研究所のいろいろな人に会って、その製作現場や販売現場、イベントや個々の商品を見てきました。とても楽しかったです。


ここは基本的に自由学園の女子部の卒業生が大半を占めています。

私は自由学園に勤めたことがあるので、女子部というのを知っています。とても清楚で落ち着いた女性たちを育てているところです。

学校には時間を知らせるために自動的に鳴るチャイムがなく、女子部の学生が修道院を思わせる古式ゆかしいチャイムを鳴らします。

毎回の食事は自分たちで作り、掃除も自分たちで責任を持ってやります。


研究所にはこの「女子部的」な感覚が残っています。


いろいろな会社に勤めてきた私から見ると、ちょっと不思議な社風です。


数値目標を掲げて、全社を上げて、お~しっがんばるぞ、というのはありません。無理な目標は立てず、手前のやれることを確実に淡々とこなしてゆく。戦略というような、生々しいものもなじまないようです。


製品には妥協はありません。いつも最高レベルのものを作っています。そこがいちばん大切で、商売は二の次なんじゃないかと思うときがあります。


こういう会社です。ぜひ多くの方にこの商品の質を知ってもらって、ファンになっていただきたい。壊れた玩具もバッグも、何年たっても直してくれる会社なんてほかにありません。


ビジネスというのは、ある意味で儲けるためにダークな部分もあると思いますが、この会社は、女子部そのもの。清潔で、まじめで、どこか牧歌的。ちょっと心配になってきます。

それで、私も応援してきたのですが、実際のところ、どれだけ役に立ったか分かりません。「女子部的」なものは変わらないし、それでいいのかな。

私はあくまでも外部からあれこれ言ってきたに過ぎませんでした。




最後にもうひと言。

私はこの会社ほど良心的な製品を作っているところは知りません。それだけが伝えたくて、「アトリエへようこそ」をランダムに続けてきたのだとおもいます。

読者の皆様、ありがとうございました!!



タシロヒツジ



愚公山を移す



といった「ことわざ」が、研究所や明日館の壁に掲げられています。「愚公山を移す」。中国の故事の中に出てくるエピソードです。

昔、愚公という90歳になろうとする老人が、自分の家の前にあるふたつの大きな山がじゃまになるので、よそへ移そうと言い出した。周りの人はその愚かな行いをあざ笑ったが、「自分が死んでも子供や孫がいる。またその子供や孫に引き継いでいけば、山が増えることはないからいつかはできる」と、実際にやり始めた。天帝は、その心意気に感じて、ふたつの山を他の場所に移したという。  

意味としては、不可能に思えるようなことでも努力を続けていれば、きっといつかは成し遂げることができる、ということらしいです。

これは今年の自由学園グループのモットーだということです。社長が選んだのでしょうか。


1932年創業の自由学園生活工芸研究所は、今年で82年。当初は、女性の起業した、新しいグループでした。創業者は海外に留学して新しい技術やデザインを学び、日本の名だたる芸術家の指導の下で、日本を代表するアーチスト集団として、パリの万国博覧会に出展し、大きな賞をもらったりもしています。

編み物、織物、染色など、個人向けに技術指導をしたり、本を出版したり、手芸業界のパイオニアでもありました。

玩具は、自由学園の幼児研究や生活研究の中から生まれたオリジナリティの高いものばかり。遊びと教育を結びつけた知育玩具のパイオニアなのです。

こうした資産を、代々のデザイナーや製作者が、品質を損なうことなく、守ってきました。


この80年間、研究所をめぐる環境は大きく変化しています。戦争があり、戦後の物不足があり、経済復興があり、バブル景気があり、バブル崩壊があり、平成不況やアベノミクス。

業界も、親が手作りの玩具を与えていた時代から、進駐軍のアメリカ人のためにバービーを作った時代、リカチャン人形の時代、仮面ライダー変身ベルトの時代、インベーダーゲーム、たまごっち、任天堂シリーズ、最近では妖怪ウオッチまで、時代による流行り廃りの激しい時代になってきました。

テキスタイルにしても、創業当初には目あたらしいかった「プラネテ」は、その後、中国製の安価な生地がどんどん入ってきたり、北欧スタイルブームなどで、国内産の生地など他には見当たらなくなってしまいました。

こうした経済や業界の変動を尻目に、生活工芸研究所では、ひたすら国内、どころか社内のアトリエにおいて、良質な玩具やテキスタイルを淡々と作り続けてきたのです。

そこには玩具やテキスタイルの老舗としてのプライドもあったでしょう。また、もともとその発祥からして、ビジネス的ではない社風や、学園関係者というターゲットを抱え込んで共に成長してきたという経緯もあります。前にも書きましたが、よい玩具が欲しい人は、ここのものを買っていれば安心、という、競合社の少ない時代でもありました。

よいものは残る。この度、あのトレンディーな玉川タカシマヤのバイヤーさんのお目にかなったように、時代が変わってもよいものは評価されているのです。

80年という年月は、愚公が山を移す仕事を子や孫に引き継いできたのに匹敵する年月です。淡々と良品を作り続けてきた、という意味では、このことわざを実証しているといえるかもしれません。

その一方で、こうしたチャンスをいかに捉えてブランド化してゆくか、他社と差別化してゆくか、それが今後の自由学園生活工芸研究所の課題なんだと思います。




オーソドックスなぬいぐるみ(ありそうで意外とない!)




生活工芸研究所のぬいぐるみは、一目見たらそれと分かる、ここでしか作っていない独特のテイストがあります。洗えるシリーズはしっかりした綿でできていて、置物としても素敵な感じの、アートな色合いと質感があります。

愛子様がご愛用されたことでブームとなった仔羊のぬいぐるみも、肉付きのよいぷりぷりした魅力がありますし、豆人形や100g人形などの小さなぬいぐるみも、他のどこにもない知育玩具らしい特徴があります。


そこに、新しいぬいぐるみが登場しました!


一見、なんとなく普通のぬいぐるみっぽいです。はじめてみたときはそう思いました。大きさも質感も表情も色合いも、いたってシンプルです。研究所のぬいぐるみとしては大きいかもしれませんが。高さは26cmあります。体重は345g。

抱いてみると、しっかりした質感があります。安定感があるのです。大人の私でも、なんだかずっと膝においておきたいような、柔らかすぎもせず、固すぎもせず、手触りもやさしくて、いい感じ!

絶妙な重さなんです。顔もまた、賢すぎもせず、可愛すぎもせず、黙って見つめてくれているような、つぶらな瞳をしています。これまた絶妙なバランス感。

ぬいぐるみを作り続けて80年以上ですから。作り手としては、研究に研究を重ねてきたのだと思います。

これまで研究所にはなかった、大きめのぬいぐるみ。オーガニック素材というたしかな材料で、首には、プラダやフェラガモでも使われる日本のMOKUBAというリボンメーカーのリボン。そしてイニシャル入りのボタン(これも京都の有名なボタン屋さんのもの!)を特別オーダーできます。

たしかに、この感じのぬいぐるみって、他のメーカーさんにもあるんです。私もいろいろなおもちゃ売り場を見てきました。だけど、顔が大きすぎたり、妙にかわいすぎたり、縫製がよくなかったり、素材が国産でないとか、抱き心地がやわらかすぎたり・・・


オーガニックメモリーベア&ラビット。老舗のプライドをかけて、この度販売開始いたします。


赤ちゃんが初めて触れるぬいぐるみは、最高のものを与えたい。そしてそれがきっと大切なお友だちになってくれるに違いありません。私のロンちゃんのように。


ラビットは4月上旬から販売開始で~す

ベアは5月からの販売開始

「星に願いを」のオルゴールが流れます。



研究所のアトリエで、ていねいに手作りしています!!!








2015年3月26日木曜日

クレヨンハウスのおもちゃ売り場



落合恵子さんという、キャリアウーマン世代にとってキラ星のような女性がいます。作家としてもすばらしい活躍をされていますが、女性や子どものための本や商品をあつめた「クレヨンハウス」というショップを長いこと経営されています。

創業37年。ほんとうに長いこと、トレンディな青山を代表するようなショップとして、オーガニック食品やコスメなども、他社に先駆けて販売してきました。

いつまでも一線にたって、女性や子どもの視点から、ここちよいライフスタイルを提唱し続けているのは、落合さんをはじめとするスタッフの信念がしっかりしているからなのでしょうね。

クレヨンハウスの東京店2階に、おもちゃ売り場があります。当然ながら、この会社の信念に沿って厳選されたおもちゃが置かれている。日本や世界の作家さんのこだわりのおもちゃばかりです。


で、ちょっと手前味噌ですが・・・

自由学園生活工芸研究所のおもちゃも、ずっと前から置いてもらっているのです。

そしてこの度、その展示スペースを大きくしていただくことになりました!!





うれしいですね~。例の「着せ替え人形」もいます。お店の方も、このお人形をしみじみ観察されたそうで、ていねいな作りに感動しました、とおっしゃっていました。

うちのおもちゃもいいですが、他にも素敵なおもちゃがいろいろりありました。とくにアメリカ製の体の中に手の入れられるぬいぐるみ(パペットというのでしょうか)。大きさもいろいろだし、種類もものすごくたくさんあって(カメレオンとかタコまである)、リアルなのにかわいくて、わたしは子どもに戻ってキャーキャー遊んでしまいました。

みなさまも、お近くにいらしたら、ぜひお寄りください。↓
http://www.crayonhouse.co.jp/shop/c/c20


高島屋デビュ~♪



まじめに淡々とよい商品を作り続けていると、いつしか評価していただけるものですね。あのオシャレな二子玉川の高島屋さんが、こちらの玩具を置いてくださることになりました。

これから大リニューアルをするという高島屋デパート。今日はキッズパークがオープンしました。まだ本格的なスペースではないそうですが、すでに研究所の商品の一部がお目見えしています。代表の永井明子さんと玩具部リーダーの澤久美子さんと一緒に、さっそく行ってみました。



先日ご紹介したばかりの「着せ替え人形」の男の子と女の子がいました。うれしいですね~。

それから「ボタンはめと時計」の勉強ができるボタンはめ時計の壁掛け。

「豆人形」と「動物ボール」。「オーガニック仔羊」もいます。

他のメーカーのぬいぐるみの隣に並べられて、うれしそうな、恥ずかしそうな顔をしていました。いささかみんな緊張していたかもしれません。なんといっても高島屋さんのおもちゃ売り場、お人形たちにしてみれば、今までにないたくさんのお客様に見てもらうわけですから。



このほか、人気の木のおもちゃ、「キックトーイ」と「おうちごっこ」がありました。どちらもグッド・トイ賞を受賞した楽しいおもちゃです。




研究所としても、デパートに卸すのは直営店で売るのとはちがうむずかしさもあるでしょうが、おもちゃのプロたちのお引き合いをいただいて、ついに出すことになったのです。

ピエロが来てショーをしたり、実際におもちゃを使って遊べるコーナーもあるし、すごく素敵な空間でした。リニューアルが楽しみですね。

二子玉川は、駅周辺の開発が進んで、ますます素敵な街になっているようです。
あちらにいらした際には、ぜひ覗いてみてくださいね!

高島屋キッズパーク↓
http://blog-tamagawa.takashimaya.co.jp/kids/




2015年3月24日火曜日

アメリカへ行く、究極の着せ替え人形



アメリカへ送られる人形がいるということで、見せていただきました、男の子と女の子です。なんて素敵な着物を着ているのでしょう。

あちらに住む日本の女の子に、祖国日本のよきお人形を与えたいということなのでしょうか。

振袖と袴。ちゃんと着物用の下着を着て、長じゅばんも着ています。帯も本格的。帯揚げだってちゃんとしぼが寄っています。もちろん足袋も穿いている!





発送の準備をしている福島邦枝さんにお話を聞いてみましょう。

彼女は、自由学園生活工芸研究所の玩具部で、検品やタグ付けなど製品の仕上げを担当しています。

「なんたって顔がかわいい!ここまで素材にこだわって作られている人形は他にないでしょう」

と、福島さんはこの人形がほんとに好きみたいです。

「胴体、手・足、顔、髪、衣装、靴、どれ一つとってもさまざまな人がかかわって作られていて、体の生地も服地もみな特注で色を染めてもらっている。顔を縫う人、手足を作る人、ワンピースや下着を作る人、靴を作る人、一体を作り出すまでに、大変な作業なんですよ!」

ちなみに彼女は、このお人形の検品や梱包だけでなく、手足作りも担当しています。手と足の形に縫われた生地に、シリコンゴムを詰める仕事です。3~4年やっても、なかなか難しいとのこと。


なるほど。


たしかに、他のどこにも売ってなさそうな、本格的な着せ替え人形です。2014年は、男女合わせて300体近く売れています。ちなみに女の子が圧倒的に売れている。誕生祝いやひな祭りのときに注文が多いそうです。

着せ替え人形、というだけあって、着せ替え服の種類と数がたくさん揃っていて、びっくりしました。

私は子どもの頃、一体だけリカちゃん人形を持っていました。着の身着のままで、そうかといって服を買って欲しいと親に言えなかった私は、決まって窓のそばで遊んでいました。リカちゃんのボディにカーテンを巻きつけてドレスにしていたのです。なんかかわいそう、その頃の私・・・。だいいち自分の服だってろくに持っていない子供だったのです。(その反動ですぐに服を衝動買いしちゃう大人になってしまった!!)

こちらの着せ替え人形をもっている子どもさんは、本当に幸せですね~。おそらく最初から「着せ替え」を目的に買ってもらうのでしょう、だって、ほんとにたくさんの衣装があるのですから。しかもシーズンごとに新しい服が発売されます。ほんの一部をご紹介しましょう。

なんてかわいいワンピース!

この春の新作、花柄ワンピース。ウエストリボンはビロード!

服だけではありません。下着やパジャマまであります。


上品なキャミソールのセット

着るとこんな感じ!

涼しそうなサッカー地のパジャマ。私の持っているものより質がよさそう

さらに、研究所のオリジナルのテキスタイルで作られた帽子やバッグまであります。


研究所の織地でできたおそろいのハットとバッグ

色違いもある

なんと、ゆかたまであるんです。楽しいですね~。どれも縫製がすご~くていねいです。


かにの模様、本格的なゆかたです

お下げ髪がかわいい新作も登場しました。こちらは注文販売です。

研究所や生地メーカーなど大勢の人の手にかかり、一体一体作られる着せ替え人形には、みんなの思いがこもっています。

「売るときはまるでお嫁にやるような気分。お人形も、それをお使いになる方も、幸せになりますように」

福島さんはこんな気分で送り出すそうです。アメリカでこのお人形の到着を待っているお子さんにもこの気持ちは伝わることでしょう。


大きさはこれくらいです

着せ替え人形ついてはこちらをご覧ください。↓
http://store.shopping.yahoo.co.jp/jiyu/c3e5a4bba4.html



2015年3月17日火曜日

今日は最終日@西武デパート



今週は忙しかったです。西武デパート、大盛況です、(予想より)。


手芸コーナーの隣のスペースということもあり、今まで売ったことのなかったオリジナルテキスタイルのはぎれセットを販売しています。

これがとっても人気なのです。メーター7,000円の糸染め国産高級綿を詰めたセット。たいへんお買い得です。



なにしろ90年近くも生地を作り続けてきたメーカーです。ヨハネス・イッテンという色彩学の権威から学んだ先代につづき、代々のデザイナーがそのメソッドでデザインし続けてきたのですから、素敵な生地がたくさんあるのです。

毎年新色をだしていますが、この端切れセットは、新色から超レアなビンテージまで、いろいろ入っています。

う、私もほしい・・・


今日は最終日、18:00までです。西武池袋本店7Fサンイデーウィークリーショップ、手芸の店ホビーラ・ホビーレの隣です。

最終日ということで、くるみボタンを無料で作れるワークショップや端切れの更なるセールもあるかもしれません。

ぜひ、覗いてください。

わたしも応援部隊で出動します!!!



2015年3月6日金曜日

西武池袋デパートに出店します!



来週の3月11日火曜日から17日水曜日までの一週間、西武池袋デパートの7階に期間限定ショップを開催します。「西武サンイデー5周年記念」の特別企画です。



チラシを写真に撮ってみました。



この期間限定のショップが西武の手芸売り場に設営されるということで、ふだん直営店では販売しない(ネットにも載っていない)貴重なプラネテ生地の割引セールをすることになりました。

プラネテだけでなく、織やトゥイルという研究所オリジナルの生地のたいへんお買い得な端切れも数量限定で販売します。端切れを買ってくださった方には無料にて、クルミボタンを作るワークショップに参加できます。(生地・材料はこちらで用意)

このほか、オリジナル生地トゥイルで作ったまったく新しい発想のエプロン、その名も「着楽にエプロン」を、西武にて発売開始します。これまでエプロンをした方がいいけど面倒くさくて、と思っていらした方、これはおススメです。美しくて簡単で、楽しいエプロンです。

ぜひ、西武池袋デパート7階にお越しください。まだ寒い日が続きますが、きれいなコットンの小物を刺し色にして、ファッションに春を加えてみませんか?


私もお手伝いに行く予定です!!




チラシの裏


バッグのホームドクター



だいぶ前に「ぬいぐるみのホームドクター」というブログを書きました。生活工芸研究所では、ときどき、お客様から、うちのぬいぐるみを治してください、という駆け込みがあります。先日も「オルゴールねむり人形」の入院がありました。

こうしたお話があるたびに、新しいのを買ってはいかがかしら、とおもってしまいますが、当の子どもにしてみれば、その人形じゃなくちゃダメなのです。それじゃないと、そして、それがないと眠れないというわけです。

たとえどんなにボロボロでも。いえ、ボロボロにしたのは自分なのですから、そのぬいぐるみは言ってみればもう自分の分身、とっても愛おしい存在なのです。


オルゴールねむり人形は出産祝いに人気(これは新品)


使い込んで味が出てくるという点においては、ぬいぐるみだけではありません。研究所では玩具部と織物部がありますが、織物部では生地を糸から染めて国内の機屋さんにとても丈夫で高級な生地を織ってもらい、それを製品化しています。

毎年新色を発表していますが、なにしろこの生地も1930年の初頭に創業者がヨーロッパの美術留学中に南仏で出会った生地をヒントに開発されたものですから、なが~~~~い歴史があるのです。

ドイツのデザイン学校イッテン・シューレで学んだ創業者が、イッテン氏の有名な色彩学をベースに作った「プラネテ」という縞模様。前にも紹介しましたが、当時日本にはあんなに鮮やかな生地はなかったんじゃないかと思います。

現在に至るまで、イッテンの色彩学を受け継いだ研究所代々のデザイナーさんが、毎年新しいデザインの縞模様を出してきているので、分厚い「縞帖」があります。その筋の人が見ると美術館入りクラスの貴重さだそうです。

縞帖にある歴代の縞模様を見ていると、どれも鮮やかでありながら日本人に似合うテイストになっていますが、やっぱりその時代なりの配色というかパターンがあって面白いです。


さて、このプラネテはいつごろの作品なのでしょうか。使い込まれてかなり味が出ています。細い縞がレトロで私好み!





実はこれはバッグなのです。この商品を買ってくださったお客様が長年大切に使われて味が出てきて、いよいよ気に入ってくださっているようですが、持ち手が切れてしまったのです。それを修理して欲しいとのご依頼でした。

織物部リーダーの本橋安希子さんが、写真のように持ち手を付け替えたのでした。さながら彼女は「バッグのホームドクター」というわけですね。



すてきなバッグに蘇りました!



ここでニュースです!

来週の水曜日3月11日から17日までの一週間、池袋西武デパートで、このプラネテの生地を販売するイベントがあります。直営店では販売していない生地をセール価格でご提供。

くわしくは、次のブログをご覧ください!!!






2015年2月20日金曜日

玩具のプロ・石井さんのお話



先日のお宅訪問以来、おもちゃの役割について考え続けています。

たまたま、工芸研究所のコルク積木について、それを実際に使っている東京おもちゃ美術館の担当者からお話を聴く機会がありました。

戦火を逃れた旧第四四谷小学校の校舎を利用して開館した東京おもちゃ美術館。以前紹介しましたが、玩具・児童文化研究者の多田千尋さんが2008年に開館した、子どもと大人が一緒に遊べるエンターテインメント施設です。
(ブログ「東京おもちゃ美術館へ行ってきました!」)

――と簡単に書きましたが、いろいろ調べてみると、多田千尋さんのお父さまの多田信作さんもまた、児童玩具の研究者の権威だったようで、玩具と教育についての著書がたくさんあり、1984年に、現在の東京おもちゃ美術館の前身である「おもちゃ美術館」を創設されています。

あの美術館の、はんぱでないコレクションやディスプレー、各教室のコンセプトの見事さは、子どものおもちゃ一筋に研究されてきた多田親子の、長年の努力と情熱に裏打ちされていたものなのですね~。納得しました!ほんとにすごい美術館なんですから。


おもちゃ美術館が毎年選定するグッド・トイを展示した教室。研究所のコルク積木が中央に


そこで「赤ちゃん木育事業本部」というところのリーダーをされている石井今日子さんもまた、おもちゃに対する気持ちの熱い方で、元保育士という経歴もさることながら、日々遊ぶ子どもたちを見ながらの、たいへん含蓄のあるお話をしてくださいました。



「赤ちゃん木育ひろば」はオシャレな木でできている

石井さんのお話をまとめてみました。


自由学園生活工芸研究所のコルク積木は、NPO日本グッド・トイ委員会が選定したグッド・トイで、東京おもちゃ美術館内にある「赤ちゃん木育ひろば」で遊ばれています。(「木育」とは、赤ちゃんから木の魅力を体感してもらい、森林大国日本を支える人材を育てようという大きなコンセプトのもとに全国展開している当美術館の活動の一つ。) 木のおもちゃには、子どもの五感にはたらきかける力があります。木目の違い、様々な樹種の香り、手で感じるぬくもり、そして赤ちゃんは舐めることで木を感じることができますから。自由学園のコルク積木もよく噛まれています(笑)。 
子どもたちを観察していると、コルクの積木は滑らず積みやすいので、無造作に積み重ねるだけで素敵な作品になるのがうれしいようですね。大きいのに軽いので、小さい子どもでも高く積み上げることができて、達成感を感じるようです。このサイズ感はこのメーカーならでは。また、良質なコルクにはプラスチックや木とは違った「あたたかさ」があり、長い間手に持っていても不快感がないので、子どもの集中力が途切れないのです。 
今の子どもたちは、小さい時からスマホゲームを与えられたりしますが、あれは本当の意味ではおもちゃではないと思います。おもちゃって、大人の都合で子どもに「遊んでもらう」ものではなくて、子どもが自分からすすんで楽しむものですよね。それにはシンプルな方がいい。子どもは自分で遊び方を見つけるのです。重さや大きさを自分の手で確かめながら、物を作る喜び、作り上げた時に感じる満足感や自信、他の子どもと協力する楽しさ、せっかく作ったものを壊したり壊されたりして感じる悔しさ――そんなことを日々実感しながら子どもの心は成長していくものです。そしてそれを助けるのがおもちゃ本来の役割。

そういう意味では、自由学園工芸研究所のコルク積木は、赤ちゃんから小学校高学年までのそれぞれの段階において、大切な成長の機会を与えられるおもちゃなのです。現在はおもちゃの寿命が短く、早くて半年、長くても数年で市場に出ては消えていく商品が多い中、親子孫と三代が使い続けられるだけの頑丈さとシンプルさを持つコルクの積木は素晴らしい。その魅力を私も伝えていきたいと思います。 (本人談)


ちょっと宣伝調ですが(笑)。私もこれまでご紹介してきたように、コルクの積木のイベントを通して、子どもたちが自分で遊び方を進んで見つける様子をつぶさに見てきました。あの集中力、創造力には驚かれました。

石井さんは言っていました。

同じオセロゲームでも、対戦相手が実際にいるのと、スマホのゲームで遊ぶのとはぜんぜん違う。相手がいれば、負けて悔しいとか勝ってうれしいとか、そういう強い感情があって、それが相手にも同じようにあることを想像することができる。ゲームだと、終わったらすぐにリセット、気に入らないゲームもリセットできてしまう。悔しさもうれしさも実感がないし、人とコミュニケーションをする能力が育たない。

たしかに、このごろ不可解な未成年による殺人事件も、相手の感情どころか自分の感情すらも分からないような犯人が少なくない。自分の感情が育っていないというか。石井さんのおっしゃるように、子どもは遊びを通して成長する。遊びを通して、他者を知り、自分を知る。楽しさ、うれしさだけでなく、悔しさもむなしさも実感としてはじめて知るのは、遊びなのだ。

そしてその遊びを助けるのが玩具か~。


「木育ひろば」にあったコルク積木。たしかによく齧られている


大好きなお人形をお布団で寝かせてあげたい、こんなやさしい気持ちが自然に生まれるような、そんなぬいぐるみを作ること、それが自由学園工芸研究所の役割なのかな~



研究所の人気者のねむり人形に、木育ひろばの方がお布団を作ってくださいました






お宅訪問




良質のおもちゃを作って売っている現場ばかりにいても、「現在のおもちゃ事情」は分からないので、赤ちゃんのいるおうちを訪ね、実際のおもちゃ現場を取材してみることにしました。


一歳半になるお嬢さんをお持ちのFさんです。私の数年来の知人で、都内の高層マンションに住んでいます。

リビングの二分の一近くが、赤ちゃんの遊べるスペースになっていました。おもちゃは中央の壁に寄せてあります。(その日は赤ちゃんはおばあさんのところに行っていて不在。)







とてもカラフルなおもちゃたち。でもFさんが買ったものはほとんどないそうです。つまりおばあさんや親戚のおばさんたちがプレゼントしてくれたものばかり。唯一彼女が買ったのは、赤ちゃんの服を買いに行った店に売っていたものを、赤ちゃん本人が気に入ったという理由で買ったピアノの玩具。

彼女はピアノの先生なので、胎教ということなのでしょう、音の出る玩具が大好きなのだそうです。




そのほか、彼女の赤ちゃんが気に入っているのは、大人の世界で興味のあるもの・・・ほんとは子どもがいじってはいけないものばかりを集めた玩具です。

ケータイ、ドアベル、水道の蛇口、ティッシュペーパー、鍵、コンセント、マヨネーズのチューブ、メガネの玩具が一セットになっているもの。こうしたものに興味津々の赤ちゃんの、ツボを集めています。

そのほか、大手玩具メーカーが毎月、子どもの成長に合わせて送ってくる「知育玩具セット」もありました。4ヶ月で止めてしまったそうですが。


今、Fさんの赤ちゃんがもっとも好きな玩具は、iPadです。先日遊びに行ったときは、それが欲しくて騒ぐので、Fさんも根負けして隠しているところから取り出していました。赤ちゃんがネットを見たりできるわけはないので、ただ触って画面が変わるのが面白いのでしょう。





なんだか、自由学園生活工芸研究所で作っている玩具とは、いろんな意味であまりに違いすぎて、なんと言ったらよいかわかりませんでした。


日本玩具協会による2013年度玩具市場調査によると、市場規模は6,756億円、うち40%はテレビゲームです。そのほか、キャラクター玩具、スマホ玩具が伸びており、オーソドックスなぬいぐるみなどの玩具の市場規模はとても小さくなっています。

子どもが積木のような素朴な玩具から遠ざかっているデータですが、それが時代の流れなのでしょう。

子どもがいる限り、玩具は必要。でも、なぜ必要なのだろう?玩具本来の役割ってなんだろう?あんな小さいうちからスマホ玩具を与えるのはいいのか、わるいのか?

子どもが喜べばいいのかな???

自分に子どもがいないのでよく分からないのですが、なんとなくビミョー気持ちになったお宅訪問でした。









2015年2月3日火曜日

手芸女子のボタンはめ時計



工芸研究所のオフィスにひとり物静かな女子がいます。いつも淡々と作業をしている彼女、なんか気になります。

牛久綾さん。私が今まで見たことのある人の中でもっとも美しい肌をしています。まるで白雪姫みたい。

ちょっと笑わせてみました。いつもはすましている。


彼女は自由学園を卒業してここに勤めて10年目。担当は玩具。これまで私が取材してきたぬいぐるみの制作者さんと素材メーカーの間に立って、生産の管理などをしています。

今日はタヌキのぬいぐるみのタグ付けをしたり、豆の人形を鞘に収めていました。たぬきや豆やトラやヒツジ・・・ここで扱っているロングセラーのぬいぐるみは数え切れないほどあります。

 
 こうしたぬいぐるみはどれも手作りで、その全種類の素材をそろえるという仕事は、想像していたよりずっと大変なことのようです。

「ぬいぐるみはパーツが小さくて種類が多いので、大量の素材が必要です。たとえばフエルトだけでも何十種類もいるし、その分だけ同色の糸も必要だし」

ここでぬいぐるみを作っているスタッフは約20名弱。そのほか内職さんもいます。その人たちはみな得意不得意の専門分野があり、このぬいぐるみならだれだれ、これはだれだれ、と担当が決まっています。ミシンが得意な人、手縫いが得意な人、細かいのが得意な人などなど、それを振り分けて材料をわたし、滞りなく出荷する・・・

すべては手作り、伝統工芸士のような仕事ですから、その技術を継承し、クオリティーの高さを保ちながら商品化するのは、簡単なことではないでしょう。


人気の動物ボールにもそれぞれ制作担当者がいる


しかも、ここの素材はほとんど特注でメーカーに作ってもらっているものばかり。ロットも少量だし、メーカーのほうで生産中止にしてしまうケースも少なくありません。

「動物ボールの素材もついに廃番になってしまって・・・」

たぬき、絶滅か!?

そうなると牛久さん側では、同程度のクオリティーを保つただけの素材を確保しなければならないのです。

80年も、ものによってはそれ以上も販売を続けている商品。たくさんのお客様に支持されてきたものを、いまも変えずに提供すること、これもまた工芸研究所の使命なのでしょう。

「一徹に守る、変えない努力、っていうんですかね」

30代の女子からこんな言葉。でも彼女が言うと説得力がある。


牛久さんは自由学園では陶芸を専攻し、工芸に入ってからは木工作りをしたかったのですが、その部門が廃止になって、玩具担当になったそうです。でもなにしろ手を動かすのが大好きという彼女。平日はうちに帰ってから、「内職」しているそうです。

それが、超ロングセラーの「ボタンはめ時計」

牛久さんが作っているのは限定干支バージョン



オリジナリティの高い玩具として、2013年度に「グット・トイ」に認定されたものです。

子どもはこのおもちゃで時間を学び、同時にボタン付けを学びます。一石二鳥の知育玩具。ありそうで、ほかでは見たことがない。かわいいので、子どもは上のフックをつかんで持ち歩きながら、時計も読める、パジャマのボタンも自分でできるようになる。子ども部屋の壁飾りとしても素敵です。

賢くな~れ!


しかし、見れば見るほど、このミシン技はすごいですよ、びっくりしました。私だってカーテンぐらいは縫えますが、この完璧なミシン目には脱帽です。

一見手芸女子風の牛久さんは、実は凄腕のプロなのでした。

 

めがね姿も肘下カバーも・・・なんか萌え~



干支のひつじ以外にも、ねこ、うさぎ、いぬ、ロケットなどいろいろなボタンはめ時計あります↓
http://store.shopping.yahoo.co.jp/jiyu/a4aaa4e2a4.html

動物ボールもたのしいです↓
http://store.shopping.yahoo.co.jp/jiyu/t-2018.html




2015年1月28日水曜日

猫もいた! (洗える動物)



先に二回続けて書いた「上品なのに洗えるぬいぐるみ」、なんと猫もいたんですよ。

もう、これは猫好きとしてはスルーできない!!

なので特別枠で、「洗えるねこ」をご紹介。

この世に猫好きは多いから、猫グッズを扱っている店ってたくさんありますよね。店中ありとあらゆるものが猫、ねこ、ネコ・・・というショップ、たとえば日暮里などにもいくつかあります。でも、いつもおもうのですが、なぜかかわいいものが少ない。だいたい丸顔で目が大きくて、漫画のキャラクターみたいな猫が多いのです。カレンダーなども、妙に甘ったるいかんじの子猫ばかりで。

やっぱり猫の魅力って、あんまりかわいすぎない、っていうか媚びてないところなんじゃないでしょうか!

そこで、こんな猫はいかがでしょう。





すごくキリッととしているでしょう。金の目玉がたまりません。黒猫です。

白黒の縞の服を着て、赤いリボンを巻いている。カッコいいですね。堂々としてるじゃありませんか。媚びてません。

「このストライプの服は、生地から特注で作ってもらっているのよ~」

と、玩具部リーダーの澤久美子さん。

「前と後ろの中心で縞の線がぴったり合うように縫うには、とても技術が必要なんですよ」

とのこと。たしかにこんなに綿がびっしり詰まった状態では、縞がコンマ数ミリずれたら目立ちます。



う~ん、さきほどアトリエの制作の現場へ行き、制作者さんの年季の入った指を見て、服まで特注と聞いてしまったら、しかも、このつぶらな金の瞳で見つめられたら・・・

やっぱり、お持ち帰りでしょう。

ということで、このねこちゃんは今うちにいます。

ふつうにアートな置物としてもOKです。

アイドル撮影会の気分で・・・













商品の詳細は↓
http://store.shopping.yahoo.co.jp/jiyu/t-2160.html?ccode=ofv&pos=2&model=